吉原御免状

吉原御免状

2013/09/22

この小説は、宮本武蔵に育てられた剣士「松永誠一郎」と裏柳生との吉原を巡る死闘を描く伝奇小説です。故隆慶一郎先生の第一作目の作品として知られています。

「吉原」と聞くと風俗の街という響きが否応なく付いて回るけど、この話で描かれる吉原は色里としての単なる舞台ではなく、公界に生きる人々への差別からの解放と、自由を守るための場所として、考えたこともない視点で描かれています。この人の書くほとんど全ての小説の根底にある、「道々の輩」と呼ばれる人々への造詣とか憧憬、考え方のようなものは、この時点ですでに完成されているんですよね。この人たちへの自分の思いを書くために小説家になったんじゃないかとさえ思います。

しかしこの作品も面白かった。主人公である松永誠一郎が気持ちいいほど強い。嘘だろうっていうくらい強い。主人公の爽やかさに対して、敵対する裏柳生の残虐さが際立っています。えげつないと思う描写も多々ありました。それがまた誠一郎の強さを引き立てています。

予知能力や過去の出来事を体験させるなどの超能力的なエピソードが多いのも、この小説の特徴なのですが、吉原が舞台なだけあって、その描写が無駄に艶っぽかったです(笑)。

徳川家康の影武者説や後水尾天皇の人物像などは、この時点ですでに描かれていて、これ以降の小説で深く深く掘り下げられているのがまた面白い。そっちの話を読んでから読み返すと、更に物語に深みが増します。

あと、隆先生は、柳生一族の物語が好きなんだなぁと改めて思います。愛情みたいのものがヒシヒシと伝わってきます。

そして「これで終わりかい!」って思わず突っ込みたくなったラスト。続きが気になって仕方がないって思ってたら、ちゃんと続編「かくれさと苦界行」というお話がありました。心からほっとしました。良かった。良かった。もしなかったら泣いていたことでしょう。隆慶一郎の小説は名作揃いやなぁ。

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